誰もが見ている風景なのに誰も見たことがない世界を見せてくれる チドリの言葉にはそんな力が宿っています。
社会学者の岸政彦さんは2015年に出した『断片的な社会学』【2015.6.10 朝日出版社】の前書きにこう書いています。
本当に好きなものは分析できないもの、ただそこにあるもの、日晒しになって忘れ去られているいるものである。‥‥ドラマチックなものより‥‥ストーリーに出来ない、解釈や理解をすりぬけて「ただそこにある」分析できないものに惹かれる。理解できないことがらこそ美しい。 (一部勝手に要約)
はじめて読んだとき、膝を打ちました。理解が届かないものは、遠くにあるのではない、すぐ目の前に拡がっているのに、気づかずやり過ごしているだけではないか、断片的なもの、日々目にする日常の風景をどこまで愛おしく慈しむことが出来るか、眩しく感じることが出来るか、私はチドリという一人の少女に教えられたのです。
岸さんの本『断片的なものの社会学』の第2章のタイトルにはこうあります。「誰にも隠されていないが、誰の目にも触れない」‥‥文中にはこんな一節も「何も起きない現実が世界中で起きている」‥‥千鳥の詩の世界が一人でも多くの人に届けば、それはそれは有り難いことです。