山陰 日本海の浜辺の村には冬 雪が多く降り、積もります。
絵本には採りませんでしたが「はつ雪」と題した詩。
「はまの 雪みち / きれいな 雪みち / くねくねとした / 雪のみち」
雪みち、雪みち、雪のみち、の繰り返しのリズム。音もなく静かに静かに降る雪の景色を、雨とともにチドリは好んだのではないでしょうか。
雪の詩には、めずらしく家族以外の人が出てくるものがあります。
「雪つもり / 雪の中 / 人とほり」たぶん近所の人なのでしょう、そして恐らくは、その姿を目にしたのではなく、チドリは座敷に居て人の気配か話し声でも聞いたのでしょう‥穏やかな白い光景が目に浮かんできます。
病弱だったチドリは、母や祖母、父ちゃん(義父の涌島義博のことか)ふたりのおぢちゃん(古代子の弟・卓と暢)といった近親に囲まれて暮らしていたので、その外側の人々、世間とは触れなかったと思われますが、世間は知らずとも世界は知っていた、そんな想いにもかられます。「人」という一文字、「人とほり」という表現の中に、自分の知らぬ世界が広がっていることを感受していることがうかがわれて、胸打たれます。