手習い歌というものをご存じでしょうか。毛筆で仮名を書く手本となる和歌のことです。有名なのは「いろはうた」でしょうか。
同じ字を繰り返すことなくすべての字を使ってつくられています。「いろはうた」(四十七文字)がつくられたのは、平安時代半ばだと言われていますが、実はそれよりも前、十世紀前半以前にできたといわれる手習い歌にもうひとつ「あめつちのうた」(四十八文字)があります。
あめつちほしそら
やまかはみねたに
くもきりむろこけ
ひといぬうへすゑ
ゆわさるおふせよ
えのえをなれゐて
[*余計な豆知識ですが、昔はヤ行やワ行の「え」が別の音「ゑ」「江」として区別されていました]
「いろはうた」に較べると意味が追い難かったせいなのか、あまり普及せず、毛筆習字が少なくなるにつれて忘れられ今に至ります。漢字に直せばこうなります。
天 地 星 空
山 川 峰 谷
雲 霧 室 苔
人 犬 上 末
硫黄 猿 生ふ為よ
榎の枝を 馴れ居て
最後の二行を別にすれば、日本の身近な自然の風景をほうふつさせる言葉が並んでいます。幼い子供たちが普段目にする親しい光景ばかりです。もしかしたら 田中千鳥も尋常小学校で習ったかもしれません。
さらにさらに余計な豆知識ですが‥千鳥のふるさと:山陰本線に観光列車「あまつち」が運行しています。鳥取駅から島根の出雲市駅まで一日一往復、因幡・伯耆・出雲を結ぶ全席グリーン車の快速列車です。ゆくゆくは鳥取と岡山県北部を走る因美線や島根と広島をつなぐ木次線へも乗り入れられる予定です。
山陰地方に陽があたる試みは、なににしろ ウエルカムです。