風
母ちやんと私と、うらの畠へ、まめを、ちぎりに出ました。そのうちに、大きな風がふきはじめました。よしやぶ(葭藪)や、むかふの山が、おそろしい、おとを、たてるので私は、おそろしいのを、まぎらさうとおもつて、おおきなこゑで、うたをうたつてゐましが、どうしても、こゝろはまぎれずにゐました。
とうとう、しんぼうが、できなくなつて、かけつてかへりました。
大正十三年六月
七歳