先日、日本の近代詩歌集を専門に扱う古書店「石神井書林」の内堀弘さんの本『石神井書林日録』を読んでいたら「タナカコヨコ」の名前が突然出てきて驚きました。
某月某日「タナカコヨコ」のことを調べているという鳥取の人=松本薫さん(*)から入った問い合わせの電話がきっかけでした。興味を覚えた内堀さんは上京した松本さんと出会います。古本屋と近代詩・出版という専門分野を活かして内堀さんは、尾崎翠―田中古代子―涌島義博―林芙美子という繋がりを見いだしてのめり込みます。関東・中央では今もあまり知られない「田中古代子」や「涌島義博」「彼が興した南宋書院」の名が繰り返され何ページもわたって綴られる不思議と興奮。
「初期社会主義の渦中にあった涌島、文学に夢を賭けた古代子に尾崎翠、さらに生田春月。こうしたあたりに一九二〇年代鳥取ネットワークというものが見えてくる。」
(*)ネット検索してみたら、コヨコの存在を内堀さんに伝えた松本薫さんは、鳥取県米子市出身の小説家でした。地元に取材しゆかりの人や物事を題材に今も小説を書き続けておられます。
人と人が出合い、響きあう。点と点をつないで線となり、やがてその線が網の目に結ばれてネットワークが生まれ、面となって伝播し広がっていく。言葉の力、文学の熱をあらためて想う夏です。