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千鳥の世界

なつやすみ日記(千鳥7歳)

 

なつやすみ日記

私は、海から、しらずに、めづらしいきれいなものだとおもつて、くらげをひろつてかへつた。するとおばあちやんが、それがくらげだといはれたので、あはてゝなげた。
 私は、ふだんから、くらげくらげといつておそれてゐたものだからずいぶんびつくりした。
大正十三年八月三日
七歳

ゆふべの十時に、大山からおぢちやんがかへりなさるので、ねむいのを、やつとおきてゐてむかへに出た。すこしのあひだ、きしやまつのに、ゐねむりをしてゐた。
 きしやがきたので、こしかけから、とびおきた。おぢちやんのすがたが、うれしくて、とびついた。おぢちやんの、ゑを見たり、大山のすずしい、はなしをいろいろきいた。

大正十三年八月四日
七歳

今日は、すこしなみが大きかつた。
 すこし沖に出たら、おばあちやんと二人がなみを、どさん、とかぶつた。びつくりあわてゝ濱にあがつた。
 出たときは、いかとりの火が、海のお星のやうにきらきらと、きれいであつたが、かへるときには、しらほ舟にかはつてゐた。

大正十三年八月五日
七歳

今日は、母ちやんもいつしよに、ゆふべの七夕さんをながしに、うみに出た。母ちやんがげんきで、たいさう、うれしかつた。このあいだ、ききようの花のさいていたところを、おしへてあげた。
 七夕さんを海にながすと、白なみがうち上げうち上げ、なんどもした。私らがかへるころ、みんなつぎつぎながしに出てきた。

大正十三年八月七日
七歳

私「又、今日も海に出やうか。」
母ちやん「つかれが出たら、わるいから、出んが江ゝぜ。」
おばちやん「どうしようか」
私「出やう出やう」
母ちやん「つかれが出たらわるいから、一日でもやすみなさい。」
私「なになに、つかれなんぞ、出はしないから出やう出やう」
おばちやん「そんならいこう。」
私「さんせいさんせい、大さんせい。」
 濱に出ると、朝の星が、やはらかなひかりをして、きらきらときれいであつた

この日の夕方、この日記を電燈の下で面白がつて書いてゐた。「けむり」の詩も前後して書いた。そして翌朝は熱發してそのまゝ永劫の眠りについた。毎朝星を頂いて海に出て行くのを、私は随分引止めて居たのだが、彼女は「海と約束してゐるからどうしても夏休み中續けるのだ」と飽くまで言い張つて、祖母をお供につれて出たが遂に遂にその宿命に倒れた。(母註)

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