「優れた詩人は、沈黙も含めて言葉にならないことを言葉にする」どなたの言葉だったかは忘れましたが、そうだよなぁと感心したことがありました。語られなかった言葉・表記の限界を超えたなにものかをはらむこと、それが文学であり、詩の力なのだと得心しました。言いよどんだこと、言い残したこと、言い逃したこと、言い切れないこと、言えないことも含めて、読み手は、書き手の声=沈黙の残響をきくのです。千鳥の詩に、大きな余韻余白を感じるのは、この「沈黙をきく」ことが出来るからです。
ゆくりなくも 吉本隆明の詩に「沈黙のための言葉」という一編があったことを思い出します。その第四連
言葉をつかわないために たれが言葉を所有したか
無数の膨大な波のように われわれは沈黙をきく
それをきくためにわれわれは生きる
今日も生きる
さけられない運命のように 沈黙の声をきくために
『模写と鏡』(1964年)初出。