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千鳥の世界

小雀日記

小雀日記

かちみの、ふじたんに、雀の子をもらつた。
 まだ小さくて、けが、少しかは江てゐなかつた。そして、江さをやらうとしても、なかなか口をあけなんだ。

大正十三年六月十一日
七歳

けふは、だいぶんなれてきた。
 ちゆんといつて、ごはんつぼをやると、チユン問いつて、小さな口を大きくあける。
 そして、目をぱちくりさせて私を見てゐた。

大正十三年六月十二日

私は學校で、雀のなくのをきいて、私の雀が、私をむかひにきたかと、おもつてさがした。雀がゐないので、うちにかへつた。
 そして、そのことをかいた。子雀は、私のかく江んぴつの上にとまつてゐて、ちゆんちゆんとうれしさうにないてゐた。

大正十三年六月十三日

私は子雀を、わたにくるめてねさせた。
 朝おきて見ると、雀がゐない。
 私は大さがしをした。こゑはするけど、見江ない。すると子雀は私のおねまのすそにゐて、ぽとんとおちてきた。
 子雀をかんむりにして、あたまにのせると子雀は、うんこをする。

大正十三年六月十四日

私のかわいい子雀は
いつでもちゆんちゆん
なきまする
江さをやると口をあけながら
あわてゝばかり、かわいゝな。
雀は私のたからです
雀は私のおともだち
雀は私の、めざましどけい。

大正十三年六月十五日

私のたからだの、めざましどけいだの、おともだちだのと、いつてゐた子雀が、やちよさんにおさへられて、ふいにしんでしまつた
 私は、あわてゝしまつて、ひとをよぶまもなかつた。やちよさんは私がなんてゐるのを見て「そんな雀が、かわいゝか、チドリチヤンは、雀がかわいゝか。」と、おなじことをいつて、わらつてゐなさつた。私はかなしくてかなしくて、うそのやうなきがした。おぢちやんも、おばあちやんも、母ちやんも、きてかなしんだ。すゞめの口やあしが、だんだんつめたくなつた。
私は子雀を、なきなきいけて、三かくのせきとうをして、なでしこの花をまわりにたてた。おもひだしおもひだしいつまでもいつまでもないてゐた。おせんこうもたてた。
「かわいゝかわいゝはつぼんには、たくさんちようちんを、ともしてやらう。」こんなことと思つた。
しんだかわいい子雀は
私のなくのが
わかつたか
しんで、なみだを
こぼしてる
 こんな、きねんの詩をつくつた。
 おれが、おさめ(最後の意)の子雀日記と申します。

大正十三年六月十六日

死んだ雀のまぶたを開けて見ると涙が出てゐたと云つて、この詩をつくつてゐた。子雀の初盆に、ちようちんをたくさんともさうと考へてゐた彼女自身が、お盆の頃には、すでに深い昏睡の裡にあつた。嘸かし雀の夢を追ひつゝ逝つたことであらう。最後の雀日記を書きながら、思ひ出しては泣き泣きしてゐたが、嘆じて云つた事には、「こんな可愛い日記を學校に持つて行つても、先生が、この他の話でも、いろいろたづねて雀のことを聞いて下さるやうな先生ならよいのだけれど‥‥」と。彼女の思考と情操にはいつも驚かされた。(母註)

手紙(5篇)

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