そのまま 素のまま ありのまま ゴロンとそこにあるだけなのに、気がつくと強く光って、静かな気品が満ちている、千鳥の詩にはそんな力が宿っています。石ころみたいになんでもないのに、硬度と密度を持った「結晶体」のような詩。
書かれた言葉のひとつひとつはくもりなく明快なのに、どこかで意味を拒んでいるというか、意味から遠ざかろうとしているというか、意味や意図のずっと手前で、或いは、遥か彼方でぼんやりと佇んでいるというか‥‥。理解・解釈を求めず、ただただひたすらに美しかったり発光したりしている「言葉の発光体=醗酵体」。発光・発熱しながら、冷たくも熱くもない常温の平熱体。それは、軟らかく優しいというより、むしろ、硬くて濃密です。(濃密といっても、千鳥の詩にはどこも暑苦しく押し付けがましいところがないことは誰もが感じることでしょう。)