「行間には何も書かれていない」‥‥どんな詩もそうですが、千鳥の詩はことさらにそうです。
見えない物を見ようとするのではなく、あくまで見えるものだけをちゃんと見ようとしている、そんな詩です。
細心、小心‥つい言葉を巧みに飾らずには気が済まないのが99%の表現者たちだとすれば、千鳥は、その対極に立っています。千鳥の詩の世界のムダのなさ ゼイ肉のなさ さりげなさ ゆるぎなさ、そこから生まれるつよさ(剛 毅 勁 彊)。慎ましい雄弁。
千鳥は、意味や価値を見ようとしているわけではありません。作為・意図・含意をこえて現前してしまう何か。だからこそ厳しく、恐ろしく、怖いのです。怖くて清々しい。清々しくて容赦ない。その凄みが千鳥の詩です。
千鳥の言葉には、過剰も不足もありません。むかしウイスキーの宣伝文句に「何も足さない。何も引かない。」というのがありました。年配の人なら憶えておられるかもしれません。西村佳也さんというコピーライターの言葉です。
添加物ゼロ 合成保存料ナシ
いつまでも古びない
いつも新しい
賞味期限のないことば。
読み手は、現実にそこに書かれている平易なことばそのものにきちんと向き合うしかありません。きちんと向き合い、静かに受け止め、胸の中で転がしてみれば、‥それでいいのです。