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千鳥の世界

一筆啓上①(そちらの様子は‥) 

拝啓 田中千鳥さま 一筆啓上 仕ります。

‥‥千鳥に宛てて〈手紙〉を書きたくなりました。百年以上昔、日本海の浜辺の村に生まれ、ひっそりと亡くなった一人の幼女に届くのかどうか、覚束ない限りですが、母親が遺した『千鳥遺稿』を読む私たちの中には、今も千鳥は生きている、そして次元は異なれども永遠に生き続ける、そんな思いに駆られての、令和の御代からの第一信です。

そちらの様子はいかがですか。心静かにお過ごしでしょうか。こちらは、「大正」が終わり、昭和から平成へ、さらに令和へと時代は変わりました。社会も暮らしも大きく様変わりしました。今年2020年のトピックは何と言っても新型コロナウイルスの蔓延です。春先から、新型コロナウイルスによる流行り病が世界中で大流行してきました。世界の感染者は7000万人を超え、死者は既に158万人以上に上ります。そういえば、千鳥さんが生きた1918年から1919年にかけては「スペイン風邪(A型H1N1亜型インフルエンザ・流行性感冒)」という感染症が世界的大流行しましたね。この頃18億から20億人と推定された世界人口の3分の1とか4分の1、約5億人が感染し、死者は7000万人から1億人だったと云われています。日本でも、内務省衛生局の統計によれば、感染者数は2380万人、死亡者約39万人と報告されています。当時の人口を考えると、日本人の二人に一人が感染した計算になります。令和2年・2020年の新型コロナウイルスはそれ以来の規模といわれるパンデミック(世界的大流行)です。一世紀を経て世界は変わりました。千鳥さんの時代とは違い、今は何もかもが桁違いに進化した高度文明社会だと云われています。交通も通信・情報メディアも発展し多様になりました。科学技術、医学医療も格段に進みました。それなのに、流行病に一喜一憂し、右往左往する日常はさほど変わっていないようです。思えば、人類の歴史は感染症との闘いの歴史でした。ペスト・コレラ、天然痘、ハンセン病、そして21世紀に入っての新型コロナウイルス、人間がどれだけ賢くなっても、自然と病には勝てない、そんな思いが深くなるばかりです。人は皆、いつの世に生まれようと、どの国に生きようと、与えられた時間の中を行くだけだ。そうだとすれば、1918年のスペイン風邪も、2020年の新型コロナも、振りかかる災禍として嘆くばかりでなく、ひとつの奇貨として受け止める姿勢も悪くはないものです。もっともこんな意見は大半の人から叱られそうですが‥‥(続く)

 

 

 

 

 

 

kobeyama田中千鳥第一使徒

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田中千鳥第一使徒

千鳥と露姫 その参(追記)

一筆啓上②(近くなって遠くなった)

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