大正時代、地方では洋服や靴はまだまだ少なかったようです。千鳥は着物に下駄か草履で浜辺を散歩していたのだと思います。もしかしたら、愛らしいぽっくりだったかもしれません。
日常からは姿を消し、今は「下駄箱」といった言葉でしか馴染みがなくなった下駄や草履ですが、思わぬ効用もあるようです。
靴と異なり、足指で鼻緒をはさむことから、足指の運動になり、末梢神経が刺激され血行が良くなるといわれます。足の裏が直接木の台に触れることで、足裏のツポも刺激されます。足の裏に平らに体重がかかるので土踏まずが形成され、姿勢が良くなるとの指摘もあります。幼児期から学童期の子どもにとって理想的な履物だと草履履きを励行している幼稚園もあります。
便利さ、安全安心が求められた結果、隅々まで身体を使う動作は少なくなりました。ダイレクトに自然と向き合い、感応・往還する機会も減りました。たしかに下駄や草履は速く走るには不向きです。けど、どうでしょうか、ここらでもう一度、ゆっくりしっかり身体を使って、自然を感じながら成長する歩みを取り戻してみてはどうでしょうか。千鳥の詩はそんなことまでも教えてくれているような気がします。【牽強附会は承知です。これも千鳥愛の為せる業と 乞うご海容。】