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千鳥の世界

一筆啓上②(近くなって遠くなった)

千鳥さんは、雑誌や新聞は目にしていたことでしょう。もしかしたら映画を見たり、レコードを聞いたりしたかもしれませんね。百年経って大きく変わりました。千鳥さんが亡くなった直後に始まったラジオ放送は音の伝送だけでしたが、昭和にはテレビ放送という音と画の放送が始まり、家庭娯楽の王者になりました。ブラウン管受像機がお茶の間の主役となる時代が長く続き、白黒からカラーに変化しました。そして、コンピュータという電子計算機が登場し、電話も固定・有線から移動携帯・無線になりました。令和となった今、通信手段はインターネット(電気世界通信網)・スマートホン(多機能携帯電話)が主流です。

といっても千鳥さんにはチンプンカンプンでしょうね。例えばこんな説明はどうでしょうか。山陰線が出来て便利になって、浜村駅前で石蔵お爺さん(千鳥のお母さんのお父さん)が運送屋さんを始めて、沢山の荷物を運ぶようになったように、インターネットやスマートホンが出来て、世界中は一つに結ばれ、いろんなモノや情報が瞬時に素早くやり取り出来るようになった、ということです。絵空事のようですが本当です。それに連れて、世界は近くなりました。ただ、架空(文字通り 空を架ける 有線ではなく無線)になることで、目に見えにくくなったことも事実です。難しい仕組みや仕掛けは理解できずとも、便利さだけを利用・享受すればそれで良い、そんな風潮が広がっりました。そんな中、こんな声も聞こえてきます。「便利になって不便になった」「近くなって遠くなった」遠く離れた人とも瞬時に繋がり交信交流できるようになったのに、何か物足りなくて、どこか不安、いつも充たされない、そんな気分です。暮らしの便利さと共に、〈ジカ直ナマ生ジツ実チョク直〉がどんどん消えていく、そんな時代でしょうか。

千鳥さんが生きた大正期、我々が生きる昭和・平成・令和。昔と今、どちらが豊かでどちらが幸せなのか、にわかには判断つきかねます。人は誰でも生まれてくる時代を選んで生きるわけではありません。ただ、自分の目でものを見たり、自分の頭で考えたり、自分の手足を動かすことが少なくなってしまうようなら、それは残念なことです。(続く)

 

kobeyama田中千鳥第一使徒

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田中千鳥第一使徒

一筆啓上①(そちらの様子は‥) 

一筆啓上③(言葉はイマココを超える)

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