今回は、千鳥の生まれ育った生家へタイムスリップしてみました。とはいえ百年後の今、失われてありません。偽であり擬であり戯のタイムトラベルです。
祖父の田中石蔵は、当時開通したばかりの山陰本線浜村駅前で日本通運公認の田中運送店を営んでいました。祖母クニは、浜辺から奥に入った集落気高町郡家の素封家で育ちました。クニの兄は政友会の県会議員でした。多分比較的裕福な家だったと思われます。
千鳥の母:古代子は、小説を書き鳥取県下初の女性新聞記者になった女性です。大正ロマンのハイカラな“新しい女”の一人でした。夫:安治博道との折り合いが悪くなり、一歳の千鳥を連れて実家に戻り、七歳で亡くなるまで浜村の郡家で育ちました。
今は幻‥千鳥の生家は消えました。ただ数年前に訪れた気高町浜村郡家の跡地には、多分千鳥が詩に描いたくだんの「カキノキ」だけが残っていました。
キノハノ ヲチタ / カキノキニ / オツキサマガ / ナリマシタ (實りましたの意) 大正十一年十一月(六歳)