今日は、三大童謡詩人のひとり 野口雨情 です。代表作は、「あの町この町」「七つの子」「赤い靴」「青い目の人形」などたくさんあります。大正時代『コドモノクニ』や『金の船』などの児童雑誌に発表されました。いずれも、或る年齢以上の日本人には、題名を聞けば、すぐにメロディが浮かび上がる歌ばかりです。「あの町この町」は中山晋平作曲ですが、「七つの子」「赤い靴」「青い目の人形」は本居長世です。本居長世は、江戸時代の国学者本居宣長の末裔でした。国学者の流れから異国情趣あふれる楽曲が生まれたことも不思議です。「青い目の人形」は関東大震災の義援金募集に際してアメリカでも歌われながら、太平洋戦争時には敵性音楽として禁止されたりと、一見平和に見える童謡も時代や社会の波をかぶっているのです。
雨情には、千鳥の詩にも多く登場する「お月さま」を題材にした童謡もあります。「十五夜お月さん」「雨降りお月さん」挿絵を描いたのは岡本帰一。
花嫁も馬もうなだれて、どこか寂し気、なぜかはかなげです。
もうひとつ、忘れられないのは「シャボン玉」です。
シャボン玉飛んだ
屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで
こわれて消えた
シャボン玉消えた
飛ばずに消えた
産まれてすぐに
こわれて消えた
風、風、吹くな
シャボン玉飛ばそ
思えばこれも寂しい詩です。一説では、幼くして亡くした子供をうたったものだと言われています。雨情自身は何の言葉も残していませんが。どことなく千鳥の短い一生を彷彿させるようで胸に沁みます。
童謡の向こうには時代や社会が見え隠れしながら潜んでいます。そしてまた作り手たちの心情も‥その奥行きの深さに今一度注目してみたいものです。