「造反有理」という言葉をご存知でしょうか。年配の方なら多少は記憶にあるかもしれませんが、かつて中国の文化大革命当時、紅衛兵が掲げた主張です。「造反に理有り」つまりは「上の者に反抗(抵抗)することにこそ正しい道理がある」という意味です。そもそもは、毛沢東が語ったことに由来します。
そのもじりですが、「背反有理」という言葉を、当ブログの管理人は永らく使ってきました。「相反する矛盾した言葉にこそ真実・真理が宿る」という意味を込めた造語です。一例を挙げれば、〈後ずさりしながら、未来に向かう〉といったフレーズです。何となくですがニュアンスが伝わるでしょうか? フランスの詩人ポールヴァレリーは<人は後ろ向きに未来に入っていく>と和訳される言葉を遺しています。【『精神の政治学』1939年】こんなのはどうでしょう。〈知れば知るほど 無知を知る〉関西の仏教系私立大学のオープンキャンパスの告知広告で見かけたキャッチコピーです。
千鳥の詩文を読んでいると、ときとしてこの陰陽反転・背反有理の思いに駆られます。
平明単純にして深遠複雑、やさしくてむずかしい、軽いようで結構 重い。
そんな印象をずっと抱いて読んできました。読み手は、言葉を超えて何かを受け取っている、そんな手応え・確信があります。そこで、矛と盾ーそんな二律背反・相反する言葉を携えながら、千鳥詩のありよう・千鳥の表現世界を気ままに訪ねてみたいと思います。次回から「背反有理」の言葉に導かれながら、千鳥詩を読み直していきます。しばらくお付き合いください。