「殿」と書いて「しんがり」と読みます。「しんがり」この言葉がずっと気になってきました。「一番後ろ」「最後」という意味です。「しんがりを務める」とか「しんがりに控える」という風に使います。もともとは軍事用語です。「軍が退く時、最後尾にあって、追って来る敵を防ぐこと。またその部隊」を指します。
先陣を切る前衛:ヴァンガード vanguard ならぬ「後衛:リア ガード rear guard 」。皆を引っ張るリーダー leader ではなく最後に付いて、落ちこぼれた人を助ける「フォロワー follower」「スイーパー sweeper 」。てっぺんを目指す登山のガイドではありません。後退戦で安心安全な帰還・復帰を果たすためのいわば「下山のガイド」です。
時代はいま この「しんがり」を求めてる そんな気がしています。弱っていたり、疲れていたり、迷っていたり、悩んでいる人を支え、背中を抱いてそっと押してあげる、「しんがり」はそんな存在です。思えば、文学・文芸の役割はいつだってそんなところにあるのではないでしょうか。すぐ傍にありながら置き去りにしてきたものを知り、忘れ物に気づく力。小さなものに目を注ぎ、かすかな声に耳を傾ける。千鳥の詩文には、そんなやさしい「しんがり」の力があるのだと思うのです。