2017年 千鳥生誕100年を記念して、映画を作りました。『千鳥百年』という30分の短編文化映画です。その惹句(キャッチフレーズ)に掲げたのが「一日は長い 一年は短い 一生はもっと短い」でした。あっという間の百年、嫌と言うほど長い一日、千鳥の生涯を言葉にしたつもりでした。とりわけ身体が重く微熱が続く彼女の病の日々はつらくやるせないものだったことでしょう。
それでも千鳥の詩文は暗いものではありません。やさしく明るいものでした。決して重いものでもなく、かといって軽いものでもありません。重力や彩度、明暗を超えてただゴロンとそこにあり続ける何か、確かな手応えなき確かな手応え、それが千鳥詩文の魅力のひとつです。世俗の泥や垢を知らぬ純真・純朴、それでいて世俗の奥に潜む真如・如実を逃さない迫真、それに触れる歓びと怖れ、千鳥の詩に触れるといつもそんな通奏低音が聞こえてくるのです。