Loading

千鳥の世界

7vs90 No.5 内心の呟き

都会の空と違い、千鳥が暮らす浜の里の空は広く高いものでした。「雲を見ている」七歳の千鳥。

シロイクモ(雲)

シタカラミテモ / アンナニ ハシル / ウエカラミタラ / ドンナニハヤイダラウ / アオイソラニ / シロイクモ  (七歳)七月九日

クモ

キレイナクモヲ / カカウト / エンピツダシテ / デテミタガ / クモハ カタチヲ / カヘテヰタ(七歳)十一月

九十歳の俊太郎もまた‥‥

雲を見ている

雲を見ている / 赤ん坊のころは / 何も知らずに雲を見ていた / あの白くふわふわしているのは雲だよと / 誰が教えてくれたのか

昔から雲を見ていた / のべつ見ていたわけではない / 気がつくと雲に眼が行っている / 青空を舞台に / 雲のパントマイムは終わらない

雲を見ていると / 雲を見ている気持ちに気づく / 他の気持ちがみんな消え去って / ただ雲だけがある気持ち / それを誰かに伝える術がない

夕焼けになる前の暮れてゆく空に / 輝きを秘めながら雲が散らばっている / 理由もなく胸が締めつけられて / まだ生まれていなかった / 遠い昔を思い出す

今日も雲を見ている

この谷川詩、まるで千鳥が内心の呟きを語っているようで‥‥不思議です。

kobeyama田中千鳥第一使徒

投稿者プロフィール

田中千鳥第一使徒

7vs90 No.4 無言の感嘆詞

7vs90 No.6 無垢の深度

関連記事

  1. 7vs90 No.2 哀しみは哀しみのまま

    2022.04.17
  2. 火種を灯す 火種を守る:火としての千鳥詩

    2020.07.26
  3. 私 消去

    2019.06.02
  4. 千鳥詩に触れて④ 〝詩を生きた〟少女

    2020.02.02
  5. 千鳥の海(波)

    2021.05.16
  6. うたわない うた

    2019.10.06
PAGE TOP