田中千鳥は、銀の詩人です。金の詩人はお日様と仲良しです。銀の詩人はお月様と雨を謳います。元よりそれは優劣ではありません。気質というかタチというか、持って生まれた性向の違いといったところでしょうか。好日性と背日性、外向きと内向き、明るさと暗さ、光と影、表と裏、正と負、プラスとマイナス、ポジティブとネガティブ、陽画と陰画、‥‥ けど間違えないで下さい。千鳥の詩は、けっして暗いものではありません。湿っぽさとも重苦しさとも無縁です。「太陽は生を謳うもの、月は死を想い象(かたど)るもの」という通り相場を超えて、そのクッキリと揺るぎない姿勢の良さは、真っすぐに私たちに向かってくる強さを持っています。金の熱血こそありませんが、そこには『銀の冷澄』とでも呼んでみたくなる力が漲っています。思えば、人は皆必ずいつか死ぬものなのだということをよく知って生きたがゆえの強さ(毅さ、剛さ)なのかもしれません。そこにはおのずと優しさ・穏やかさが宿ります。
八月二十三日、今夜の月は、月齢四日だそうです。大正時代 千鳥が見ていたのと同じ月を 令和の今、私たちも眺めています。限りある生も死も超えて受け継がれていく言葉、文学の原始、その一つがここにあることを想います。