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千鳥の世界

暮らし:蚊帳

消えたものシリーズ、今日は、〝蚊帳〟です。〝ちゃぶ台〟だって姿を消しましたが、〝ちゃぶ台返し〟という言葉は漫画やテレビ・映画のお陰か生き残って若い人もご存知のようです。けど、〝蚊帳の外〟となるとどうでしょうか?

クーラーやエアコンがない時代には、暑い夏、座敷を開け放って寝ていました。〝蚊帳〟は、文字通り蚊などが入らないようにする〝帳(とばり)〟です。(なんですって、〝帳(とばり)〟も分からない、ですって?ググってみて下さい。「室内に垂れ下げて、隔てにする布。たれぎぬ」と出てきます。)風があると、夜気が通り結構涼しいものでした。座敷・縁側・庭先はいけいけでつながっていました。(いけいけといっても〝意気軒高イケイケドンドン〟ではありませんよ。関西弁で〝行き来が自由で空間的・情報的に互いが通じ合っている〟状態を意味する言葉です。)

岩波新書『コロナ後の世界を生きるー私たちの提言【2020年7月22日 刊】の中で建築家の隈研吾さんがこんなことを書いています。(抜粋要約してみます)

ひとつは「ハコからの脱却」である。二十世紀に、人々はハコに閉じ込められた。ハコの中で仕事をする方が効率がいいとオフィスビルや大工場に閉じ困られて働き、空調完備のタワーマンションに暮らすようになった。都市はハコに埋め尽くされ、ハコとハコの隙間も、鉄のハコの移動のための空間でしかなかった。コロナ後の社会は、より重装備・厳重なハコを目指すのか、出入り自在な庭先・縁側ぐらしを目指すのか

もうひとつは「歩くことの復権」。歩くことで体調を整え、歩きながら様々なことを考えた。古代ギリシャのアリストテレス一派は、歩廊で歩きながら講義を行い、逍遥学派と呼ばれた。歩くとは、人との距離を自由に選べることでもある。いつも一人でいるということであり、自由であるということである。

チドリが〝蚊帳〟で起居したかどうかはわかりません。ただエアコン(空調)なき時代、暮らしは自然と地続きでした。閉ざされた「ハコ」ではなく、室内は開かれたものでした。チドリはまた「歩く少女」でした。歩く中で自然を呼吸して逝きました。(今回もまた「強引マイウエイ」論考です。)

kobeyama田中千鳥第一使徒

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田中千鳥第一使徒

暮らし:下駄・草履

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