さて皆さんは、この四コママンガ、見たことがおありでしょうか?
大正時代一世を風靡した『正チヤンの冒険』です。日本初の新聞連載四コママンガとして先回 紹介したグラフ誌『アサヒグラフ』の創刊号1923(T11)年1月25日号から掲載されました。画は椛島勝一、作は織田信恒が担当しています。作者の織田は前職日本銀行員としてヨーロッパに駐在していました。かの地でふれた子供新聞や子供雑誌に刺激され、帰国後朝日新聞社に入社、アサヒグラフの子供向けページの編集を担当していました。画を描いた椛島は、銅版画のような細密なペン画を得意とする挿絵画家でしたが、このマンガでは一転、柔らかな絵柄で描きました。今見てもモダン、垢ぬけたタッチは古さを感じさせません。吹き出しという手法を初めて登場させたのもこのマンガでした。
大正浪漫といえばすぐに竹久夢二の画が浮かんできますが、一方で、こんな西洋的のハイカラモダンな貌も持っていたのです。
主人公の「正チヤン」と相棒の「リス」が活躍する物語はすぐに人気となり、1924年10月には宝塚少女歌劇団で舞台化され、1926年には東亜キネマで無声映画も作られました。主演を演じたのは、若き日の浪花千栄子でした。
もうひとつ。冬にかぶる「毛糸のボンボン飾りを付けたニット帽」これを「正ちゃん帽」とよぶのもこのマンガに由来しています。
温故知新のシリーズは一旦ココまで。次からは新しいシリーズの予定です。