チドリはうたいません。うたうことをまだ知りません。目にしたこと、言いたいことをただことばにするだけです。それを目にする私たちには、言いたいことをことばにする初々しさ・よろこびだけが伝わってきます。その快感、気持ちよさ。千鳥の言葉が百年を経ても、古びず遠くまで届く所以はここにあります。言葉の力、言葉のふしぎ。それは、言葉にできる解釈や理解ではおさまらないものです。言葉にならない、けど、明晰で豊かなあるもの。ただそこにあるだけで語りかけてくる力を持っている何か、それがチドリのことばだと思うのです。
「希望は過去にしかない」 オスカー・ワイルド
「ゆきしものはみなはしけやし初桜」 大道寺将司 *「はしけやし」は古語で「いとおしい いたわしい」の意味です。