詩専業で生きていくのが難しいと言われる日本。この国で、おそらくただ一人、長く詩人というなりわいで飯を喰ってきたのが谷川俊太郎さんです。1931年12月生まれの90歳。今も精力的に詩を書き、次々に詩集や絵本を出版し、その活動範囲はウエブまで拡がっています。もとより谷川さんに千鳥との接点があるわけではありません。(実は以前に一度絵本『千鳥のうた』を送ったことがあるのですが‥)
大正を短く生きた少女詩人と、昭和平成令和を生き続ける老詩人。7歳と90歳、このふたりの詩人の間に拡がる距離を測りながらその親近をしばらく眺めてみたい、そう思い付いて新シリーズを始めます。対比・対照するのは、『千鳥遺稿』と『どこからか言葉が』です。
この詩集は、2016年9月から月一 ペースで朝日新聞夕刊文化面に連載してきた詩52編を編んだものです。【2021年6月 朝日新聞出版 刊】新聞連載は今も続いています。谷川さんの詩集・詩業は他にも膨大にあり、どの詩集を採り上げてもよかったのですが、この詩集は、詩の極北を目指した実験的なものではなく、平静に平熱で語る比較的平明散文的な詩が並んでいて、詩人の肉声が響いてくるように読めます。千鳥との対比・対照に一番ふさわしいと感じました。次回から、ふたりの詩を並べながら、その交感 交歓について語ります。