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千鳥の世界

大正発 令和行 シリーズ 住

時代はくだって、数えきれぬほどの利便の増加を見たが、利便さゆえに人間が賢明になったという証拠はどこにも発見できない。」をキイワードに始めた大正発 令和行シリーズ、第二回は「住」についてです。

昨今、畳敷きの和室を持つ住宅はめっきり減りました。身の回りから畳、障子、ふすま、が消えていきます。ましてや、縁側縁先縁の下なんてはるか昔、忘れられた懐かし言葉になってしまいました。

縁側は、部屋と外部をつなぐ板張りの空間です。かつては縁側でお茶を飲んだり座りながら話している姿などがよく見られたものでした。大正時代の山陰少女・千鳥、体が弱く座敷に臥せっていることが多かった彼女もきっと、朝な夕なに床から縁側を眺めて暮らしたことでしょう。時には友達が訪ねて来ることもあったかもしれません。

縁側はウチでありながら、ゆるやかにソトに開かれた空間です。陽射しが注ぎ、風が渡ります。風に乗って海鳴り・潮騒も聞こえてきます。

「ふち」や「へり」を表す「縁」は又、人と人、ものごとの結びつき・関係を意味することから「ゆかり」「えにし」「よすが」とも読まれます。

現代の建築家・隈研吾さんは或るインタビューに答えて、こう語っています。

20世紀型の建築は、コンクリートやガラスを高く積み上げて大きな閉じた「箱」をつくり、気密性の高い箱の中に多くの人が集う高層ビルが、最も効率的だと考え実践してきました。しかし、新型コロナウイルスが、閉じた箱にはさまざまな脆さや弱点があることを気づかせてくれました。これからは箱の中と外の境界をあいまいにして、通風型の箱をつくることで、箱の外の居心地も良くすることが重要になってくると思います。(Website: Science Portal 2020.9.30.「建築は人を幸せにするか」より )

Photo © J.C. Carbonne 画像提供:隈研吾建築都市設計事務所

「閉じた箱」からゆるやかに「開かれた箱」へ。集中・閉鎖・密閉から、分散・開放・通気へ。もとより問題は山積みです。物理的な条件・制約はじめ、プライバシー・セキュリティもあれば、手間やコストもかかります。“回れ右!”は容易ではありません。けど、ここいらで、近代からのベクトルを180度転換することも射程に入れてみては‥とも思う今日この頃です。

1918~1920にかけて流行ったスペイン風邪

次回は「衣」の予定です。

kobeyama田中千鳥第一使徒

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田中千鳥第一使徒

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