大乗仏教 禅宗の経典『金剛般若経』にこんな言葉があります。「一切有為法 如夢幻泡影 如露亦如雷 応作如是観」(いっさいのういのほう むげんほうようのごとし つゆのごとくまたかみなりのごとく まさにかくのごときかんをなすべし)」この世のいっさいのものは実体のない仮のすがた、すべては無常「空」であると心得て生きるのがよい、といった教えでしょうか。20世紀のアメリカの画家 James Lee Byars (ジェイムズ リー バイヤーズ) はこれを元に《Life’s Six Likes》を発表しました。「 Life is like a dream, like a vision, like a bubble, like a shadow, like dew, like lighting 」(生とは夢のようなもの、幻影のようなもの、泡のようなもの、影のようなもの、露のようなもの、雷のようなもの)
千鳥の生涯は、七年半と短いものでした。早すぎたとか、もっと長く生きて欲しかったという思いが当然の如く浮かびます。しかし、思い返してみると、《千鳥の生きた証》は、後世の我々に確かに残されました。〈生身〉は露幻の如く消えようとも〈実の生〉は確かに生き続けているともいえそうです。さすれば、短い一生も、何かが欠けた「三日月」ではなく、十全に過不足なく生きた全体・満ち足りた「望月」だったのかもしれません。